初釜に臨んで
松親会 小関 微笑子
 令和6年1月21日(日)の初釜は、しとしとと降る冷たい雨に始まり、園内の五重塔が薄く煙りました靄に包まれた夕暮れに終わりました。

8時30分に準備の方々が全員集合し、三渓園の鶴翔閣が一気に活気づきました。
 午前10時過ぎ、本席に、御宗家様、奥方様、収様と共に、各支部からお越しになりました門人の方々がお集りになり、正客には永井先生がお着きになりました。御宗家様の新年のご挨拶に始まり、それぞれの支部長が新しい年の抱負を述べられました。
引き続き、御宗家様がお炭点前をなされ、お香の少し苦みのある香りが漂い、初釜の雰囲気が溢れておりました。床には「双龍図」がかかっておりました。
 その後、支部の方々には本席で清晨庵製の花びら餅を召し上がっていただきました。

 水屋ではお濃茶席の準備が終わり、銅鑼が打たれますと、お客様の衣擦れの音が響いてまいり、一気に緊張感が高まりました。
 床が改まり、竹の掛け花入れに御宗家様のご自宅の庭で摘まれました「鎮信椿」が生けられ、その細長い白いつぼみが心持ち上を向き、一点を見つめた姿が、お茶席の空気を引き締めておりました。
   御宗家様が濃茶をお練りになり、収さまがお運びをなさいました。
 
 水屋では、お客様においしく召し上っていただきますようにと一碗一碗、心を込めて練らせていただきました。それぞれの役の方々もその場の勤めを果たしていらっしゃるのは、当たり前のことなのですが、真剣な目つきは日頃とは違う雰囲気でした。
 一席目が終了いたしますと、楽しみな点心になります。緊張した気持ちがほぐれ、温かなひと時でございます。
 平戸・本陣の御酒で乾杯後、初釜料理で和やかな会話が聞かれます。その後、恒例の福引きが始まり、一段と和やかさが増していきました。
 今回は、御宗家様より、松竹梅の三品をご用意いただきました。また、門人全員に星野園の抹茶を頂戴致しまして、お心遣いに恐縮いたしました。
 賑やかに終始しました点心の後は、二席目のお客様に寄付きで花びら餅を召し上がっていただき、濃茶席にご案内致しました。
 三席目は、裏方に徹した門人の方々の為の席で、収様が濃茶をお練りになりました。
 全ての席が終了いたしました後は、ほっとする間もなく片付けとなりました。
 私は、昨年と今年の濃茶席の責任者をさせていただきましたが、昨年はほとんど役を果たす事が出来ませんでした。今年は出来ましたかと問われますと、胸を張って「はい」とは言えませんが、戸惑いながらも昨年よりは、ほんの一歩進めたような気持がいたしました。皆様のお力添えに御礼を申し上げます。
 閉門の5時には全ての片付けが終了し、まだ熱気の残る気持ちと共に三渓園を後にいたしました。


令和6年初釜に参加して
松親会 島田真理子
 前日からの雨が続く1月21日(日)、横浜の三渓園は鶴翔閣にて催された鎮信流の初釜に参加させていただきました。
慌ただしい水屋支度は、時間との競争でございました。
 お炭をおこす方、お茶掃きをされる方、とりどりのお茶碗、お菓子を並べてくださる方、皆さまの役割分担に従い、てきぱきと、慎重に場が整ってまいります。
 私は恐縮にも点前を仰せつかり、同じく交代で半東とお点前を務められる徳江さんと二人、立礼卓の組み立てとその配列のお役に加えていただきました。
 頼もしく炭が赤くおこり、やれ安心と息をついた時に気づいたのは、お床の白梅のはっとする白さでございました。
お軸の紅梅との響き合いをどう表現してよいかわかりませんが、とても美しく拝見いたしました。
 初めての薄茶のお点前でしたので、できるだけ普段通り、いつも通りを心掛けましたが、記憶が曖昧で、気持ちと動作がちぐはぐになり、やはり緊張していたのだ、と思います。残念。
 お点前が終わりました後、奥方様が「ご一緒に」とお運びくださり、恐縮して戴いたお茶がひときわ香り高く、自分は実に未熟であると、改めて実感した一服となりました。
 午後の回は徳江さんと交代をし、精一杯、半東と水屋を務めさせていただきました。
 皆様が、にこやかに席へ入られるのをご案内し、お菓子を運べば「綺麗ね」と喜んでいただけて、緊張はずっとございましたが、ちょうど雨がやんで雲間から日差しが入ったタイミングと重なり、ほのぼのと明るい気持ちになりました。
 お見送りをいたしましても、皆さまずっと微笑んでくださり、「結構でした」「お疲れさま」とお労いいただきました。
 私自身は何もできなかった、不甲斐ない一日でありましたけれど、あきらめず僅かずつでも学び、進んでいければと、望むばかりです。
 ご指導いただきました皆様には御礼を申し上げます。