百段雛祭りに参加させていただいて
 
東京支部 池上摩利子
 沈丁花が芽吹き、紅梅にメジロの初音が聞かれる季節となりました。
 この度目黒雅叙園の依頼により九州七県の歴史・文化の厚みを物語る「お雛様たち」が東京都指定有形文化財「百段階段」に飾られました。
 
 九州からは(公財)松浦史料博物館が奥州白河藩主松平定信の娘・蓁姫の1808年の松浦家お輿入れの時、持参されましたお雛様で芥子雛と呼ばれます掌サイズの可愛らしい精緻な金蒔絵が施された雛道具が出品されました。
 それに伴い鎭信流も茶席を設けました。
 茶席となります牛若の間は天井も壁も床柱も彩色木彫板が張りめぐらされ、障子は組子障子、襖は螺鈿細工の戸板と色彩豊かな中、書院造りの床に平戸真景の軸、白桃と橘の生け花など優雅な雰囲気の中、台子飾り一式が整いお客様をお待ち申しました。
 200名様がお越しになり外国の方も大勢来られ御宗家様の流暢な英会話に和まれて、正座が辛く体操座りでしたがお茶をお出し致しましたら素敵な笑顔が返ってまいりました。
 お帰りの時にはお客様方のお顔が輝いて喜んで下さり、嬉しいお言葉も頂きました。
 お水屋では奥方様に細やかな御配慮を頂きましたので手際良く運ばれ「お抹茶が美味しい!!」と何度もお誉めの言葉を頂戴致し励みとなりました。
 お一人お一人の思いやりが、おもてなしの心に通じます事を鎮信流で学ばせて頂き感謝致しました。
 白河から来られた方々が「お雛様に会いに参りました」と嬉しそうに帰られます後姿をお見送り致しながら・・・ 遠い昔、座敷でお雛様飾りに忙しくする母の代りにお客様へお茶をお出し致しましたら「襖の所から、やり直し!!」と父の声。
 母の哀しい顔と恥ずかしかった思いから茶道の稽古を初めましたが、父の形見の出し袱紗を眺めながらお雛様と共に父と母を偲ぶ一日でございました。
お誕生日の花束をさしあげて