鎮信公の御祭茶にお招きを受けて
下関支部松要会 会友 岩本康子
 この秋も、長府庭園で行われる、鎮信公への御祭茶と故仁田姉妹へのお献茶にお招きを受けました。当日の11月6日は故仁田サチ子先生の10年目のご命日でしたが、お天気は穏やかな秋日和に恵まれました。
午前10時前に懐かしい長府庭園に着きますと、お茶室のお隣のお部屋でご準備に暇のない皆様にお会いしました。お茶が始まる前に、庭園の散歩を勧められ、お言葉に甘えて、紅葉の始まった庭園をゆっくり散策させて頂きました。
 散策から戻りますと、お香の焚き染められた書院の間で、まず、鎮信公への御祭茶が守られました。お点前は美津枝様が、お供えは静枝様がなされ、その後に私どもが並び、お床に掛けられてある鎮信公の御写真に拝礼致しました。お花は清楚な白菊が活けられていました。  
続いて、仁田サチ子、モト子さまへのお献茶が松岡様、お供えは朝倉様で行われました。床には、旧約聖書の伝道の書の一部が優しい仮名文字で書かれたお軸が掛けられ、クリスチャンであられたサチ子先生にまことに相応しいお軸だと思いました。
 その後、美味しい点心を戴きながら、歓談の一時を過ごしました。この会で初めてお会いした、田原さまの自己紹介をお聞きし、母上と如月公さまと御曾祖父母さまとのご縁、鎮信流松要会への入会のご縁を知り、出会いの不思議さを感じました。
 午後からは、お濃茶、薄茶のお茶席になりました。床のお軸は“啐啄同時”という御宗家様宏月公の書に変えられ、静枝様がその意味をご説明されました。その席で、田原様より「円恵公御作りと拝見 心月」と銘のあるお茶杓の披露がありました。お濃茶のお点前は朝倉様がされ、お菓子はこの季節にぴったりの柿の練り切りでした。お濃茶があまりにも美味しいので、もう一服所望される方が何人もいました。お濃茶の席では、あまりお喋りをしてはいけないということでしたので、お喋りの私にはちょっと我慢の一時でした。
 さて、いよいよ自由な薄茶の一時です。午後から廊下の窓から差し込む秋光もより明るくなり、進み始めた庭園の紅葉を目にし、小鳥の囀りを聞きながら、楽しいお喋りをしてお茶を戴きました。それにしても、私はいつもお茶を頂くばかりで、何度もお点前をされる皆様に申し訳ないとつくづく思いました。
 皆様、本当にお世話になりました。素晴らしい一日を有難うございました。

 玻璃越しの秋光明るき茶室かな   / 康子
 秋陽添ふ献茶にこころ浄められ   / 静女