鎮信公御祭茶にお招きを受けて
 
下関支部松要会 会友 岩本康子
 今年も紅葉の美しい下関長府庭園で行われる鎮信公の御祭茶にお招きを受けました。

 当日11月7日は立冬で、午前中は冬の到来を思わせる肌寒い日でしたが、午後からは庭園に面した広い窓から差し入る光で書院の間も明るく温かくなって参りました。

 午前中にまず、鎮信公への御献茶が清澄にまもられました。

 お床のお軸には鎮信公のお写真が飾られ、お点前は松岡様、お供えは浜谷静枝様がされ、皆で二礼二拍手一礼をして鎮信公へ拝礼致しました。

その後、仁田先生と、今年九月ご逝去された仁田モト子様への献茶が行われました。

お床には、仁田先生直筆の流麗で優しい仮名文字の和歌のお軸がかけられました。
 仁田先生、モト子様のご遺影を前にご姉妹へのお茶を浜谷美津枝様が点てられ朝倉様がお供えをされ、皆で黙祷を致しました。
 お二人のお人柄を偲ぶしずかなお献茶でした。

 午前中の御祭茶、御献茶の後、美しい庭園を眺めながら、いつものように美味しい点心をいただきました。
 午後からは、続け薄茶となりました。お部屋には香が焚きこめられ、お床には立派な漢詩の軸がかけられました。
 お花は小花ズイナの照葉とホトトギス、ピンクと白の野菊が白磁のモダンな花瓶に活けられ、深まりゆく秋を告げていました。
 
 中野様の心のこもったお点前に見入りながら、皆の心がひとつとなるお茶室に生まれる静寂に、別世界に居る平和を感じました。
 季節を彩る和菓子の後のとろりとした濃茶、また、その後の薄茶の味も心温まるものでした。

 また、席主の静枝様のお道具やお菓子に纏わるお話、お点前の所作の意味についてのお話などためになるものばかりで、茶道の合理性、奥深さを改めて感じました。
 そして、このように故人を偲び、参加した者の心を一つにすることのできるお茶の素晴らしさを思いました。
 そのための準備、後片付けなど大変なことを静かに果されている皆様に改めて感服致しました。
 皆様、今日の一日をほんとうに有難うございました。
立冬の茶室のこころひとつなる  錦秋の庭や朗らに鳥鳴ける / 康子
  秋深しいのち浄める献茶式  紅葉の光そそぎて温和なり  / 静女