2014年 あっという間の「初釜体験」
 
下関支部 須 永 誠
鏡開きの日、「松要会」の初釜に同席させていただいた。正座もロクに続かず、茶会の席を覘く機会すら今まで全くなかったのだが、「達人の点てるお茶が飲める!」は、それだけでも十分に魅力的であり、加えて、「松要会」は、義伯母所縁の方々が続けておられ、義母もその末座に加えていただいているが、近時健康に優れず無沙汰が続いており、その容体のご報告も兼ねて、お訪ねさせていただいた。
 お招きいただいた浜谷さま宅では、そこかしこに花が活けられ、部屋には香が焚き込められ、蹲には温湯が注ぎ置かれ、そして炉には湯の湧く釜の音。
 それは当世流に言えば「お・も・て・な・し!(合掌)」なのだが、客を「茶でもてなす」とは、その趣旨を戴して、季節に応じた迎える場を整え、道具や茶そのものなどを、段取り良くもてなしができるように手配することから始まる、あらゆる日本文化に通じた「心」が具現化しているのだなあと感心した。
 新春の寿ぎは、そのような場で、古串屋の粋を集めた膳をいただくことから始まった。
 そして、座をあらため、濃茶と薄茶、これが「初釜」の本番。
 唯一の男性客だった私は、浜谷靜枝さまのご配慮で正客の隣に座らせいただき、豊田さま、中野さまの所作を見習いつつ、また、点ててくださっている浜谷美津枝さま、朝倉さま、松岡さまの、所作や手捌きの凛とした美しさに見入りつつ、お茶を服させていただいた。
 初めていただいた「濃茶」のとろりとした舌触り、甘味。
 いただいた後、口腔に残る得も言われぬ香り。
 さらに座をあらためての「薄茶」のさっぱりとさわやかな味わい。
 両方とも、思わず「お代り」を申し出てしまった。
 その後の、初舞と歌留多にも時の過ぎるのを忘れ、気が付けば夕刻近し、まさにあっという間の「初釜体験」だった。
 お暇に際しては、お心尽くしのお土産までいただき、さらに恐縮。
 新しい年の皆さまのご多幸を祈りつつ、本当にありがとうございました