ひらどで大茶会~武家茶道鎮信流~
平戸支部 森 三佐子
 雲一つない高天の10月12日(日)、「第40回国民文化祭 第25回全国障害者芸術・文化祭」(ながさきピース文化祭2025)の関連行事の一つとして「ひらどで大茶会~武家茶道鎮信流~」が開催されました。
 松浦史料博物館(九皐斎・閑雲亭・松浦家私邸)で県内外からの招待客と長崎国際大学生への茶会(濃茶席・薄茶席・点心席)、平戸オランダ商館と棲霞園で平戸市民や観光客への呈茶と、趣の違う三会場で、平戸の秋を楽しんでいただきました。
 御宗家様、奥方様のご高配で、長崎支部、佐世保支部、平戸支部の県内三支部と長崎国際大学と協力して茶会に臨むことができました。平戸市、松浦史料博物館、平戸オランダ商館、棲霞園、他、関係の皆様のご尽力に感謝申し上げます。  


       
濃茶席 九皐斎(松浦史料博物館)
長崎支部松和会 草野 雅子
 濃茶席は、御宗家様がお席主で、長崎、佐世保の二支部の担当でございました。
 旧松浦家住宅は、平戸松浦家第37代詮(あきら)公によって明治26年に建立され、現在は松浦史料博物館となっています。
 床、棚、付け書院を備えた10畳の座敷、12畳の次の間、建立当時、書斎と内向きの接客空間であった九皐斎が、濃茶席の会場でした。床には松浦鎮信公筆の「雁之間昇進を祝う一文」が掛けられ、一対の花器には、白菊、南天、白膠木(ヌルデ)が、丈高く飾られました。物部守屋と争った聖徳太子が、ヌルデの木で四天王像を作り祈ったところ戦いに勝利したことから、「勝軍木」とも表され、後世、武門では戦の折に勝利を願ってヌルデをいけばなに使うようになったそうです。    
   
 四席のお客様(招待客・長崎国際大学生)をお迎えいたしましたが、各席、御宗家様とお正客様の和やかで滋味あるお話を伺いながら、緊張感でいっぱいの気持ちが少しずつほぐれていきました。格式あるお道具に、畏れ多い気持ちを抱きながら、半東として、大きな食籠を出させていただきましたことは、忘れられない思い出の一つとなることと存じます。お茶は「星の初鷹」、お菓子は「百菓之図」より、「玉蔓(たまかずら)」でした。かわいらしく自分の意見をしっかりと持った源氏物語の玉蔓を思い起こすようなお菓子という感想がございました。
 水屋では、準備の時から道具の取り扱いに緊張しながらも、皆様の立ち居振る舞いに多くを学ばせていただきました。初めて、平戸でのお茶会に参加させていただき、自らの至らない点も多く感じ、これからの課題を見つけることもできたのではないかと思います。貴重な経験をさせていただきましたことに、心より感謝申し上げます。    
   


           
ひらどで大茶会「薄茶席」に参加して
長崎国際大学茶道文化補助 岩瀬 聡子
 10月12日、「長崎ピース文化祭2025 ひらどで大茶会~武家茶道鎮信流~」において、長崎国際大学大学生15名が閑雲亭での薄茶席を担当させていただきました。
 今年の記録的な猛暑の夏から、やっと心地よい秋風を感じつつありましたが、当日の天気予報では気温30度超えとの事。やはり予報通りの暑さと汗、そして緊張の一日となりました。
 今年は、「地域連携活動」として、8月に事前学習や現地実習で嶋内先生より閑雲亭の解説をしていただき、松浦史料博物館やオランダ商館の見学、生月の世界文化遺産・春日集落などを訪れ、平戸の歴史や観光について池永先生より説明いただき学びました。    
 
 大学では座布団をお客様に見立てての練習をおこないました。亭主の動きに合わせて、半東、運びや水屋の連携をとる難しさに戸惑いました。昨年の大心茶会に参加した学生4名が中心となり、お茶を点てるタイミングなど、いつ何を水屋に連絡したらよいのか具体的な練習をすすめました。
 「遅い!」、「今度は早い!」「運ぶ場所が違う!」「数が違う!」などトラブルもありましたが、試行錯誤する中で1年生から4年生まで分け隔てなく意見を出し合い、解決策を見いだすことができました。
 当日は、御宗家様より「まずは皆さんが楽しんで茶席を運営していくことで、お客様も楽しんでいただけます。」と緊張している学生に激励をいただきました。奥方様からは、お点前はもとより、花の生け方、菓子の盛り方など実践的なご指導を直接頂き、「自ら考えて役割を果たす」ことができたのではないかと思います。お茶(一の白昔:星野園)もお菓子(秋の干菓子:松灋庵製)も喜んでいただきました。    
 
 大学に戻ってからの解散式では、嶋内先生から「今回の茶席を通して経験した事は、みなさんの人生の中での宝物になると思う。これからもこのような一歩をたくさん踏み出して欲しい。」とお話いただきました。その話しを聞いている学生の後ろ姿は、背筋がピンと伸びており成長を感じました。

 また、フィールドワーク(茶会参加)として1年生25名が客作法体験として茶席に入りました。半東として茶席に座る先輩の変貌にびっくり!する野球部学生の姿もありましたが、平戸の海風を感じながらの初めての茶席は、学生にとって貴重な経験となったことと思います。

 たくさんの方々のご協力の下、長崎国際大学として薄茶席を成功させることができましたこと、大変感謝いたしております。学生とともに、私も楽しく茶席に関わることができ嬉しく思います。ありがとうございました。    
 
 


   
呈茶席 平戸オランダ商館
長崎支部松和会 佐々木 敦子
 平戸オランダ商館での呈茶は、長崎、佐世保、平戸の三支部合同で担当いたしました。
受付は、平戸市役所の方に担当していただきました。150枚の前売り券は完売し、当日券50枚も午前中に売り切れとなりました。
   正面の展示ケースを床に見立て、伊能忠敬の弟子の保木敬蔵が松浦家に献呈した「伊能図」が二幅、掛けられました。左手に、平戸松浦藩の大名行列が描かれた長いパネル、右手には、象革製馬具・鞍・鎧、第35代煕(ひろむ)公の正妻蓁(しん)姫様の花嫁道具の一つの挟箱、第36代曜(てらす) 公がご使用になられた陣笠と行列に使用された赤い色の槍鞘が展示されました。お客様は、興味深そうに見入っておられました。
   商館職員と男性3人が、お運びを担当いたしましたが、お客様に「美味しいお茶とお菓子でした」と喜んでいただけましたことが、何より嬉しいことでございました。お茶は「一の白昔」(星野園)、お菓子はカスドース(蔦屋)と和三盆(松浦史料博物館製)でございました。
 最後に、ご加勢いただきました平戸市役所の皆様、商館の皆様と共に、お茶とお菓子をいただき散会いたしました。
 商館を出ますと、心地よい海風が吹いており、清々しい気持ちで平戸を後にいたしました。    
   


呈茶席 棲霞園
平戸支部松華会 高橋 千東 
   
 平戸の方々には、「お花畑」の名称で馴染み深い「棲霞園」の呈茶は、平戸支部が担当いたしました。
   「棲霞園」は、平戸城の北側の大名庭園で、平戸藩第十代松浦煕(ひろむ)公が整備なさいまして自ら「棲霞園」と名付けられました。園内では、和歌を詠まれたり、蹴鞠や能等も楽しまれたようでございます。そのような由緒あるお庭での呈茶でした。庭の鬼瓦を床に見立てまして、秋草を手鞠籠に入れ、ゆかりの道具を立礼卓に飾りました。
 当日は、特別に一般公開され、市内外からお客様がたくさんお出でになりました。「ひらどツーデイウォーク大会2025」の2日目でもあり、ゆったり城下町散策コースの参加者にもお立ち寄りいただきました。
    お客様は、三々五々、庭を散策され、池や対岸に見える松浦史料博物館をご覧になりながら、一服のお茶(一の白昔:星野園)とお菓子(牛蒡餅:熊屋製)を召し上がっておられました。お客様の「美味しいお茶でした」の一言が何よりうれしいお言葉でした。随時、平戸市市役所職員の方から、棲霞園についての解説もございまして、皆様熱心に耳を傾けておられました。
 事前の準備から撤収まで、平戸市職員の細やかな心遣いと気配りのもと、お運び、水屋と連携して滞りなく進めることができ、感謝の気持ちで一杯になりました。この茶会への参加を通して、心一つにして協力して行事を進めることの大切さと喜びを改めて実感することができました。今後につなげていきたいと思いました。