平戸大心茶会 ―「宗及茶湯日記」受贈記念―

佐世保支部 松清会 松浦 純二
平戸支部 松華会 森 三佐子

 松浦史料博物館が「宗及茶湯日記」を受贈いたしました記念として、10月5日~12月8日まで特別展示「武家茶道鎮信流展―「宗及茶湯日記」受贈記念」が開催されております。本膳料理の膳が所狭しと並べられた千利休以前の「饗応のしつらえ」や台子飾りの展示、懐石道具と の対比、千利休の消息やお流儀ゆかりの品が展示された一角は、武家茶道鎮信流をより深く理解できるものとなっています。
 去る11月10日(日)には、限定50名(1席10名の5席)のお客様をお迎えして、博物館の文物を使っての平戸大心茶会が開催されました。「ガラス越しの展示閲覧だけでなく、展示の道具を使って、手に触れて、歴史と時代と風土を体感する博物館を目指す」という御宗家さまの御発案により実現の運びとなりました。
 佐世保支部、平戸支部の会員が、濃茶席、会席席、薄茶席を合同で担当いたしました。蒼穹に浮かぶ行雲と穏やかな陽光のもと、ゆったりとした時間が流れ、悠久の歴史に思いを馳せる一日となりました。当日の様子は以下のようなものでございました。
 
     
濃茶席
佐世保支部 松清会 瓜生 陽子
 小春風の気持ちいい、打ち水をしてもすぐに乾いてしまう暖かい日でございました。 濃茶席では、高杯に1人分のお菓子を9種類(シイタケ、くるみ、金柑、干柿、かやの実、栗、湯葉、ザクロ、きんとんに青のり)盛り合わせしてお出しいたしました。宗及日記にある食材を工夫して味付けされたお菓子です。目前に置かれたお菓子の種類の多さに、お客様は驚いていらっしゃるご様子でございました。
 床には、伝来の御軸をかけ、花入は竹一重切に吹上菊と平戸に咲いているハマボウの照葉が入っております。お客様が席入され、その後、ご宗家様が茶席に入られてお話されると、お客様が耳を澄まして熱心に聞いていらっしゃる様子が襖の外にいても伝わって参ります。
 博物館よりの道具にに点前担当者は、手が震え抹茶が茶杓からこぼれないように気を付けながら、お濃茶を練り、半東の気働きに助けられ濃茶席担当全員で協力しながら茶席の時間が流れていきます。
 茶席が終わり道具を拝見して帰られるお客様の後ろ姿は、心なしか満足されたご様子で安心致しました。
 ご宗家様がお傍で温かく見守って下さり、皆の心がひとつになりました事、心より感謝いたします。
 
 
会席席
平戸支部 松華会 髙橋 千東
 会席席は、松浦史料博物館内の九皐齋が会場でした。床には、天井に届くような紅葉が牡丹籠いっぱいに入っておりました。違い棚には食籠やからすみ日記などが飾られておりました。
お料理は本膳と二の膳がありまして、本膳には飯、汁、坪、なます、香の物を、二の膳にはかまぼこや雉のつくねなど七品の料理が一枚のお皿に盛り合わせてありました。「宗久茶の湯日記」から秋に使われていた食材を使ってお献立を考えられたそうです。
 お客様がお席入りされましたら席主であられます奥方様のご挨拶の後、お膳をお出し致しました。その後直ぐに奥方様が長柄をお持ちになりまして、皆様にお酒を一献差し上げられました。皆様お食事をされながら、お料理の内容に話に花が咲いておりました。おなますのお魚は、鯉が使われていることや坪碗には、あわびやたこなどの魚介類が使われており平戸らしいお料理にされたことや二の膳のお料理は、昔はかわらけに盛り付けてあったことなど興味深く聞いておられました。お席を出られるときは皆様美味しかったとおっしゃっておられ、ホッと致しました。又膳の持ち方、出し方も懐石とは異なり、お客様も利休以前の時代の雰囲気を楽しんでおられました。
一席が一時間でしたので水屋の方では、慌ただしくしておりましたが、会席席担当の五名One for all,all for oneのような気持ちになっておりました。また、案内誘導の担当者の方にも、水屋や運びの補助をして頂き助かりました。
宗及の時代はこうであったのだろうと想いを馳せながらも、このようなお席に携わることができましたこと、有り難く思っております。
最後になりましたが、奥方様の御指導に感謝申し上げます。
     
薄茶席
平戸支部 松華会 中野 靖
 今回、私は薄茶席で、按針教室の先輩と一緒にお点前と半東を五席仰せつかりました。
 会場は松浦家御新邸(鸞戀(らんれん)荘)です。床のお軸は閑雲亭から見た平戸の風景、お花はこの時期にしては珍しい搗栗(かちぐり)でとても縁起の良いものでした。又、棗は古代蒔絵の平棗、茶杓はご宗家がお作りになったものを使用させていただきました。
 薄茶席の始まりは正午からでした。準備も整い、お客様をお迎えする時間はとても緊張しました。一席目に半東をさせていただきましたので、少し緊張もほぐれ、いざ、二席目のお点前。始まってみると、手順が気になり、お客様のほうに気を向けることができませんでした。今思うと美味しいお茶を点てることができたのかとても心配です。しかし、席でのお客様はお庭焼の「鶴ヶ峰」と、珍しい「色唐子」の茶碗、又、白磁の水差しにとても興味を惹かれておられ、席主との会話も弾み、和やかな雰囲気の中、五席何とか役目を務めることができました。お茶に触れ、自分の心を落ち着かせ、相手をもてなす心を再確認した一日となりました。
 今回、身の引き締まる貴重な経験を積ませていただきましたが、教室での自分がそのまま出ることを痛感いたしました。これからはより一層気持ちを集中させてお稽古に励みたいと思います。