「オランダ茶会in石見銀山」に参加して
下関支部 松要会 浜谷静枝
 2017年7月30日石見銀山遺跡世界遺産登録10周年記念企画の一環として平戸藩松浦鎮信流武家茶道茶会が、松浦史料博物館の特別展示の期間中、島根県大田市大森町で開催されました。
 これは、昨年(2016年)平戸で「日蘭交流茶会」が大々的に催されたことが、きっかけだと伺っています。
16世紀初めから開発され400年に亘って採掘された石見の銀が、平戸のオランダ商館を通じて海外に輸出されていたことから、石見・平戸・オランダは、銀を通じた交流があり、共に10周年を祝賀する記念茶会企画となりました。

 この度の石見銀山茶会は、西日本・九州支部で担当するように命を受け、4月、7月と有志7名で、下見に参りました。初めて訪れた大田市大森町は、周囲を山(元は銀山、植林された)で囲まれ、町並みも樹木にまもられ緑豊かな静かな町という印象でした。
銀で繁栄した大森町の街並み、家並みは,寛政12年(1800年)の大火で焼失。熊谷家住宅(石見銀山御料大富豪商家)1801年再建。城上神社1812年再建と次々ともとの町並みに復興。大森町の街並みは、重要伝統建物群保存地区に指定されています。そのためか200年余の歴史を持つ町並みの古民家家並みで生活されている方々の暮らしの気配が感じられず、建物が建ち並ぶ静寂な空間があるのみです。これは、世界遺産登録決定により大森町人口400人の方々が誇りをもって町並み遺跡を守ろうとしている覚悟とうかがえました。
世界遺産登録10周年記念茶会として、当地では初めて武家茶道鎮信流が披露されることになります。おろそかな気持ちでは出来ないと身を引き締めさせられ帰関しました。
 29日、9時間30分、九州各支部より23名新下関駅集合。貸切バスにて9時40分スタート。蝉しぐれと暑さが季節を感じさせる相変わらずの静寂の町、熊谷家住宅で、ご宗家様ご挨拶のあと15時より準備開始。平戸・長崎・佐世保・福岡・宇和島・下関支部に東京支部からも応援に来て下さり、それぞれお献茶・濃茶・薄茶と役割分担に従い、厳重な梱包をほどきお茶席の設え、花活け、水屋の準備をしました。国指定重要文化財のため、冷房設備はなく真夏日の室内で、汗を流しながら皆様キビキビとしかし和やかに行動。19時開始予定の懇親会が18時30分に開始を早められたほどです。ご宗家様、奥方様はじめゲストご夫妻、城上神社宮司、石見銀山資料館館長・学芸員・職員、熊谷家住宅スタッフ、オランダ商館館長、松浦史料博物館長・学芸員、島根県教育庁文化財課世界遺産室職員、菓子司つたや社長、門人の総勢51名で記念茶会の成功を祈念しました。
30日、献茶式は、8時40分より正一位城上神社(県指定有形文化財)で催されました。
大森代官所跡(現石見銀山資料館)横のこんもりとした木立の中に建つ社殿。
200年余の風雪に耐え、簡素ながらも風格を感じさせるこじんまりとした神社です。
氏子代表5名、大森町代表、門人代表30名が着席。宮司により太鼓、小鼓、笛が奏され厳かに祝詞が奏上され開始。清々しく凛とした崇高な空気の中、ご宗家様による献茶点前が粛々と進み、葉山幹事長により中継ぎされ宮司よりお供えされました。
この度の献茶は、銀山関連の物故者の方々の鎮魂のための献茶式です。祝詞奏上の中、氏子代表の方々が拝礼、太鼓により9時20分献茶式終了が告げられました。城上神社で献茶式が行われたのは、初めての事だそうです。初めての方々は、深く感じ入ったご様子でした。
 その後、直ちにお客様を熊谷家住宅で行われる茶会にご案内致しました。
濃茶席 一階  書院の間    台子 草の草
薄茶席 二階  広間(下座床) 長板
のお点前でおもてなしをいたしました。
濃茶席、薄茶席共に、床、脇床のオランダ茶会らしい武家茶ならでの格調高い設えに、皆様驚き感服されたご様子でした。
寄付では、オランダ人クリエイターデザインによる(東西百菓之図より)主菓子が供され、薄茶席では、石見銀山特製干菓子(1種)が平戸オランダ干菓子(1種)が珍しく喜ばれました。
 
 嬉しいことに大田高校茶道部(表千家)の生徒10数名が顧問、茶道指導教師に引率され参加。案内、その他の手伝いに協力して下さいました。学校では、見られない働きだと驚いておられました。皆様、濃茶・薄茶共に席入りされました。驚きと好奇心で、鎮信流を楽しまれたことでしょう。
点心は地元のそば、平戸の郷土料理オランダ製チーズを加えた創作料理でおもてなしをいたしました。
 140名余のお客様を6席すべて席主としてもてなされたご宗家様、奥方様の力強いお心配りに感謝申し上げます。
お帰りのお客様を受付でお見送り致しましたが、誰方もにこやかに満ち足りたご様子と拝見いたしました。席主ご宗家様、奥方様との会話、もてなしに鎮信流との良い出会いをされたのだと思わされました。
 この度の茶会は、ご宗家様、奥方様のご計画・ご指示・ご配慮の中、門人の皆様のよい記念茶会にしょうとの心意気の顕れであり、心をこめたもてなしに結集した総力の賜物だと思われます。
 忘れてはならないのは、石見銀山資料館・熊谷家住宅・松浦史料博物館の皆様の事前の準備、当日の運営、事後の処理等一致団結して、ご支援ご協力頂いたお陰だと心より感謝申し上げます。
 また、お茶会にお客様としてご参加下さった皆様にもお礼を申し上げます。
石見銀山遺跡世界遺産登録10周年記念茶会をよろこびの内に終えることが出来ましたことを心より感謝申し上げます。
 よい学びの機会を与えていただきました。“茶の心”をあらためて思いおこしております。
 最後に、ご宗家様閉会の門人へのご挨拶の際、サプライズがありました。
銀の包装紙に包まれた素敵な銀器を記念品として皆様にご恵贈下さいました。
思いがけないお心遣い、ご配慮に驚きましたが、有難く頂戴いたしました。
 素晴らしい茶会でした。すべてに感謝申し上げます。